山崎浩のカラー作品と画材

山崎浩

山崎浩さんのカラー作品は、市販のマンガ原稿用紙(上質紙)の裏側(!)に描かれています。ぼくの知る唯一の例外はコンピュータリブさんのサイトで使用されたイラスト2点(この記事にも転載)で、水彩紙に描かれています。
山崎浩公認ホームページのトップページにトリミングされて使われているのがそれです。(2005.7.24現在)
イラストボードを使用しないのは、山崎さんの描きかたに関係があるようです。
主線は濃い目の鉛筆で描き、水彩絵の具で彩色するというやりかたですから、消しゴムがけで紙を毛羽立たせるわけにもいきませんし、画面が汚れるので直接下描きできません。
別紙に下描きをし、アニメーターがよく使うライトテーブルを用いたトレースで、本番の鉛筆線を入れるわけです。余談ですが、イラストレーターや少女マンガ家が厚手のイラストボードに下描きを転写する場合は、トレペを鉛筆を使ってカーボン紙化する手法を用いることが多いですが、効率が悪いようです。
上記の2枚はあの時期ひさびさにカラーイラストの仕事で張り切ったので、B3の超大作を描いたため、マンガの原稿用紙では継ぎ目ができるので避けたということです。
さて通常マンガ用原稿用紙の裏面を用いる理由は、枠線が邪魔なのと、彩色後、紙が撓むのを防ぐためのようです。
画材は透明水彩と誤解されていますが、不透明水彩。しかもプロユースの高級画材でなく、町の文房具屋(数がずいぶん減りましたが…)でも購入可能な、小学生が使っているのとなんの代わり映えもしない、安いものです。
ぼくは以前マンガの技法関係の本の仕事で、よい絵を描くためには、よい画材を使えば表現の幅が広がるという趣旨を展開したことがありますが、画材そのものに絵心があるわけでなく、“弘法は筆を選ばず”ということなのかな。
でも、筆はさすがに小学生が使っている筆だと、腰がなく細かい部分の彩色に向かないので、いいのを使っているはずです。
山崎さんの仕事はずいぶん見せてもらいましたが、「まったくプロの技には恐れ入る」という驚きはいつになっても変わりません。

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