山崎浩自主制作本のモノクロ入稿法

山崎浩

2005年春の『少年の時間(とき)』を出して以来、モノクロの作品集はたぶんしばらく出さないことになると思います。といっても、うちは編集とデザインを担当しているHIROSHIが、入稿直前に突発的に出す本を決めるので(山崎さんすら実際に何が収録されて、どんな表紙になるかも知らない)、ふたをあけないとわかりませんが、大物の“山猫”以外の未収録作品で、ぼくが特に出したいのは、『ガルダイヤ』(パイロット版)と『猫マンガ短編集その2』と『神話』、そしてあの連作。
初期の作品に関しては山崎さんが、あまりの乗り気じゃないので、むしろ…。(以下、秘密)
カラーが来たら次はモノクロということで、同人誌印刷のモノクロです。
最新の技術によって、データ入稿の際、アミトーンのモアレが出にくくなったそうで、興味はあります。
カラーの入力時にはあまり感じないんですけど、1200から2400dpiのモノクロ2階調で取り込んだ後、グレースケールに変換し、解像度を落とすというプロのやり方は知っていても、やはり入力時のスキャナーの性能が、家庭・事務用とプロユースのフラットスキャナーでは段違いだと自覚せざるをえません。
この夏、HIROSHIが手伝う呉屋真原作、草壁ひろあき作画の『カラバッシュ・アーロ』はモノクロデータ入稿ということになり、四苦八苦していますが、面付けが複雑なもの(一部、縮小率をコマごとに変えたりというようなこともやりました)では、デジタル作業のよさがよくわかります。
一方、山崎さんの本のときは、過去の本では、原画を入稿せず、コピーを版下に使っています。
これは、軽オフセット(紙を印刷原版に使う、原理的にはリソグラフやデュプロの製品と同じだと思いますが…)の面付け工程で、原稿が切られたり、折られたりするのを避けるためです。
新型のデジタルのコピーだとモアレがおこりやすいので、わざと旧式できれいに取れる(スピードは犠牲となりますが…)コピー機を探して、コピーします。
原稿の保護以外の利点としては線の飛びやベタと重なった部分のトーンの印刷をきれいに出すためです。
余談ですが、マンガ雑誌の現場では、原稿を使わないで入稿する場合、紙焼き(印画紙=写真)がよく使われていました。
最近はレーザープリンターの出力原稿を版下に使うのが当たりまえになりましたが、以前はメジャーな商業誌では作者が原稿に使う以外では、いくらきれいでも原稿にコピーを使うのはタブー視されていて、一度コピーをとったほうがきれいに印刷されるのにわざわざ原稿を入稿し、きれいに出ないことが多かったと記憶しています。
さて、コピーを取ったら次は、ベタや線の弱いところを、筆ペンやマジックで補強し、汚れにホワイトを入れる、ほとんどアシスタントの仕上げ作業の真似事。あまり細かくやってもきりがないので、一晩でできる範囲の作業となりますが…。
プロのマンガ家に見せても、印刷がきれいな割にコピー入稿というのには驚かれます。問題は旧式のコピーがどれだけ残っているのか。
ハーフトーン原稿のアミ処理も以前のコピー機(初期のデジタル機)だとすごく良かったんですけど、これに関してはスキャナーで取り込んで、レーザープリンターで荒めに出力して使用しています。
同人誌印刷所の技術や機械のレベルが上がってきましたが、こういう原始的な作業をしなければ、きれいな印刷にはなかなかならないんです。
モノクロも確実に雑誌掲載時よりきれいな保存版にしたいと思って、編集をしているんですよ。

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